3. ドル高の進行:関税の引き上げは、アメリカの貿易赤字を縮小させる効果がある一方で、海外からの資本流入を増やし、ドル高を引き起こします。この結果、アメリカの輸出競争力が低下し、アメリカ製品の価格が上がります。輸出企業は不利になり、貿易赤字削減の効果が相殺されて逆効果になるおそれが強い。
4. 新興国経済への打撃:アメリカが関税を引き上げると、中国やメキシコなどの輸出依存度が高い新興国は大きな打撃を受けます。特に中国の輸出産業は深刻な影響を受けて成長が鈍化し、世界的な景気減速が進行します。
5. アメリカの製造業回帰は限定的:ミランの関税理論は国内産業を保護し、製造業の回帰を促す狙いがありますが、実際には関税の引き上げが生産コストを押し上げ、サプライチェーンを寸断するため、アメリカ国内の製造業が競争力を失い、かえって生産拠点の海外移転が進むリスクがあります。
6. 世界経済の不確実性増大:関税引き上げが進めば、世界経済は先行き不透明となり、投資家のリスク回避姿勢が強まります。これにより株式市場が動揺し、企業の設備投資が控えられると世界経済の成長が減速し、長期的には景気後退リスクが高まります。
Q. そもそも貿易収支は均衡する必要があるんでしょうか?トランプ政権は貿易赤字を問題視し、関税を引き上げることで赤字を減らそうとしていますが、貿易赤字が必ずしも経済にとって悪いわけではありません。
貿易赤字=外国からの投資の裏返し:アメリカの貿易赤字は、外国(中国や日本など)が米国債や株式を購入することでファイナンスされているので、貿易赤字は海外からの資本流入の結果です。これによってアメリカの低金利が維持され、企業や政府が投資しやすくなっています。 アメリカは世界最大の消費市場:アメリカは世界最大の消費国であり、輸入が多いのは当然のこと。貿易赤字を無理に削減すれば、消費者は高い価格を払わされ、企業は供給網を見直すコストが増加します。 貿易赤字=経済成長の一部:アメリカは長年貿易赤字を抱えながらも、世界経済の中心であり続けています。貿易赤字があってもGDP成長率が高く、雇用が増加しているなら、それは問題ではありません。
したがって貿易収支が均衡する必要はありません。 貿易黒字が望ましいというのは、大昔の重商主義の理論です。重要なのは経済成長や雇用の増加、投資収益など、より広範な視点で経済を見ていくことです。