大きな理由の一つは、最初の模式標本が採取された「場所」の情報があまりにも曖昧だったことです。

当時の記録には、本種が正確にどこで採取されたのかが書かれておらず、チリ中南部という漠然とした広い範囲を手当たり次第に探すしかなかったのです。

しかし、その努力はついに報われることになります。

130年ぶりに再発見!意外な新事実も発覚

研究チームは、この問題を解決するために、19世紀の博物学者フィリベール・ジェルマンが記した記録を精査しました。

ジェルマンは1893年に、チリ中部のラ・アラウカニア州にあるハシエンダ・サン・イグナシオ・デ・ペメウエという広大な私有地を探検し、そこで標本を採取したことがわかりました。

そこでチームは、彼が通った可能性のあるルートを歴史的資料をもとに推察して再構築し、その経路上でカエルを探すことに。

そして2023年から2024年にかけて、再構築したルートを辿る形で調査を実施。

すると、アラウカニア州を流れるロルコ川とポルタレス川の流域で、ついにアルソデス・ヴィタトゥスの2つの個体群を発見したのです。

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再発見された場所/ Credit: Edvin Riveros(2025)

発見されたカエルは、見た目の特徴からすぐに「アルソデス・ヴィタトゥスだろう」と推測されましたが、より確実な証拠を得るためにDNA解析を行いました。

その結果、正式にアルソデス・ヴィタトゥスであることが確認されました。

それと同時に意外な新事実も判明します。

個体群のDNAを調べたところ、アルソデス・ヴィタトゥスに必ずあると思われた背中の縦線は、全ての個体に見られるものではなく、個体によってあったりなかったりする「多型」であったことが判明したのです。

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背中に縦線のないアルソデス・ヴィタトゥス/ Credit: Edvin Riveros(2025)

これは「縦線があることがアルソデス・ヴィタトゥスの決定的な特徴である」とされていた過去の認識を覆す発見でした。