バターよりもオリーブオイルなどの植物油の方が健康的だというのは、今や常識です。

では、その違いがどの程度健康や寿命に影響を与えるのでしょうか。

この疑問に答えるために、ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)の研究チームは、30年以上にわたる大規模研究によってその答えを提出しました。

彼らは、1日あたりバター10グラムを同量の植物油に置き換えるだけで、がん死亡率と総死亡率が共に17%低下すると結論付けました。

研究の詳細は、2025年3月6日付で『JAMA Internal Medicine』誌に掲載されました。

目次

  • 油の選択は健康にどれだけ影響を及ぼすのか
  • バター1かけ分をオリーブオイルに置き換えると死亡率が17%低下する

油の選択は健康にどれだけ影響を及ぼすのか

一般的に、脂肪は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。

バターに多く含まれる飽和脂肪酸は、血中コレステロール値を上昇させ、動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高めるとされています。

一方、オリーブオイルやキャノーラオイル、大豆油などの植物油に含まれる不飽和脂肪酸、特に一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸は、血管の健康を守り、炎症を抑える効果があると知られています。

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バターは美味しい。「本当に健康に悪影響があるの?」と疑問に思うことも / Credit:Canva

しかし、果たして日々の油の選択が、本当に寿命に影響を及ぼすのでしょうか。

この疑問を解明するため、研究チームは30年にわたる追跡調査を行いました。

研究対象者は、「看護師健康調査(Nurses’ Health Study)」および「医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)」の参加者22万1054人です。

各調査では、バターや植物油の摂取状況が4年ごとに詳細に記録されており、健康状態との関連が分析されました。