しかしそうした点を考慮しても、大局的にみれば「収縮ではなく回転が写る」ことがしっかりと確認され、理論が示す“テレル効果”の正しさが改めて裏打ちされたといえます。
この成果が示すのは、相対論の数式だけではピンとこない「実際の見え方」を実験的に具体化したことの意義です。
とりわけピコ秒カメラとパルスレーザーを組み合わせ、あたかも光が超スローモーションで進むように“トリック”をかける手法は、今後ほかの相対論的効果をビジュアルに体感するうえでも応用の余地が大きいでしょう。
たとえば高エネルギー物理や天文学の分野では、光速に近い速度で運動する粒子や天体現象を、こうした実験室スケールの技術を使ってシミュレートできる可能性が考えられます。
また教育分野へのインパクトも大きいとみられます。
教科書で「高速で運動する物体はローレンツ収縮する」と学ぶ一方で、「実際に見ると意外にも形が変わらない」というのはイメージしづらい部分でしたが、今回のように写真や動画の形で視覚的に示されると、相対論的現象の理解がより深まると期待されます。
要するに、数学や理論だけでは得られない“実際に目の前で見る”体験こそが、特殊相対性理論の直感を養う手段になるということです。
こうした試みをさらに発展させれば、より複雑な形状や、球面波の光源による歪みの補正なども検討できるかもしれません。
今回の実験は、ローレンツ収縮が写真には見えず、代わりに回転が映るという“テレル効果”を世界で初めて実験的に可視化した事例ともいえます。
これを機に、私たちの直感の外にある不思議な世界が、よりクリアに見えてくる可能性があります。
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元論文
A Snapshot of Relativistic Motion: Visualizing the Terrell Effect
https://doi.org/10.48550/arXiv.2409.04296