なぜなら、銀河ハロー全体に広がっている暗黒物質の密度は、地球や太陽の質量に比べると圧倒的に小さいからです。

太陽系内に存在する暗黒物質は、計算によっては地球ひとつ分の質量にも満たないと推定されており、もし一瞬で消えたところで重力バランスに大きな変化は起こりません。

私たちが感じる引力のほとんどは、あくまでも太陽や地球そのもの、あるいは他の惑星によるものなのです。

しかし、銀河規模やさらに大きなスケールでは話が別になります。

銀河全体を取り囲む暗黒物質がもし瞬時に消滅したなら、星々の運動を束ねていた重力的な枠組みが一気に崩れ、長期的には銀河が拡散したり、星団の構造が激変したりする可能性があります。

ただし、こうした変化はすぐに目に見えて起こるわけではなく、数千万年から数億年単位という長大な時間スケールで進むと考えられます。

実際、私たちが日常的に体感するような“即座の影響”はほぼないでしょう。

暗黒物質が崩壊するかどうか、そして崩壊するとしてその寿命がどれほどなのか——これは宇宙がどのように形成され、進化してきたかを理解するうえで重要なカギを握っています。

寿命が長ければ従来の「冷たい暗黒物質(CDM)」モデルをさらに強く支持する一方、もし観測である程度速い崩壊が見つかれば、現在の標準的な宇宙論シナリオを修正する必要が出てくるでしょう。

こうした研究は今もさまざまな観測プロジェクトで行われ、将来的には「暗黒物質の崩壊現場」を直接捉えるかもしれません。

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元論文

First Result for Dark Matter Search by WINERED
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.134.051004?_gl=1*1cwz7uv*_ga*NDc0MDg5NTkwLjE3MjAzOTI3NTM.*_ga_ZS5V2B2DR1*MTc0MTY4Mzc5OS45NC4wLjE3NDE2ODM3OTkuMC4wLjk1NjI4NzM0Ng..