とはいえ、夜空の背景と天体由来の微光を細かく分離し、さらに複数の銀河で固有の速度(ドップラーシフト)まで考慮した解析は他に類を見ないほど厳密で、暗黒物質の寿命に関する“新たな下限値”を打ち立てたのは大きな前進といえるでしょう。
では暗黒物質が崩壊したとき、何が起こるのでしょうか。
暗黒物質が崩壊したらどうなるのか?

そもそも暗黒物質は、銀河や銀河団を“重り”のように支える存在とされていて、特に銀河の回転速度を説明するには、星やガスなどの「見える物質」だけでは足りないと考えられています。
もし暗黒物質が宇宙の歴史の途中で崩壊し続けていたとしたら、銀河を取り囲む暗黒物質の質量が徐々に減っていき、銀河同士の重力バランスが変化するでしょう。
その影響は銀河単体よりも、数百〜数千の銀河が集まる超銀河団のような巨大なスケールでより顕著になる可能性があります。
暗黒物質が大きく減れば、団全体の重力ポテンシャルに“微調整”とは言えないほどの変化が生まれるでしょう。
また、宇宙の大規模構造の形成シナリオ自体も変わりうると考えられます。
暗黒物質が宇宙のはじめからずっと安定して存在している、という前提の下で銀河や銀河団の成り立ちが説明されてきたからです。
もし暗黒物質が一定の寿命(現在の宇宙の年齢以下など)で途中から崩壊し始めると、例えば「銀河がどれくらいのタイミングでどんな規模で形成されたか」というシナリオを大幅に組み直さなければいけないかもしれません。
加えて、崩壊により光子やニュートリノなどの軽い粒子が放出されれば、宇宙背景放射(CMB)のスペクトルや星間ガスの電離状態に変化が生じ、星形成のペースを変える要因にもなり得ます。
では、もし仮に「暗黒物質がいま突然消滅したら」どうなるのでしょうか。
実は、太陽系や地球といった局所的なスケールでは、ほぼ影響がないだろうと考えられています。