この特徴により、ハンセン・ライティングボールは「手書きよりも速く、正確に文字を記録できるツール」として当時高く評価されました。

「練習すれば、文字を打つ速度が話す速度に匹敵する」とさえ言われていました。

このハンセン・ライティングボールは商業生産された初のタイプライターであり、1870年に販売されました。

そして販売が開始されて以降、視覚障がい者向けのモデル(触覚的な金属キーを採用)も開発されるなど、アクセシビリティの向上にも貢献しています。

このハンセン・ライティングボールを使用した著名人の中には、ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェがいます。

視力の低下に悩んでいた彼は、執筆活動を続けるためにこの機械を導入しました。

しかし、輸送中に損傷したため、長く使うことはできなかったと言われています。

それでも、ハンセン・ライティングボールは当時としては非常に先進的な機械であり、後のタイプライターやコンピュータのキーボードにも影響を与える発明でした。

オークション市場での価値と現代への影響

画像
現存するのは35台。そのうち30台は博物館が保有 / Credit:Auktion Team Breker

では、なぜこの150年以上前の機械が、今になって高額で取引されるのでしょうか。

大きな要因は、その希少性です。

ハンセン・ライティングボールはわずか180台しか製造されておらず、現存するのは約35台のみとされています。

しかもそのうち30台は既に博物館で展示されており、残っているのは5台未満です。

保存状態が良好なものはさらに少なく、コレクターにとっては極めて価値の高いアイテムとなっています。

過去のオークションでも、その価値は証明されています。

例えば、前回のオークションでは20万ドル(現在では約2,900万円)という驚異的な価格で落札されました。

画像
オークションに登場。果たしてどれだけの値がつくのか / Credit:Auktion Team Breker