スマートフォンやPCでのタイピングが当たり前の時代、「タイプライター」という言葉にはどこかノスタルジックな響きがあります。

しかし、その歴史をたどると、かつてのタイプライターは革新的な技術の象徴でした。

その中でも「ハンセン・ライティングボール」は、世界初の商業用タイプライターとして、タイピング技術の黎明期を築いた伝説的な存在です。

そして2025年、この歴史的な「ハンセン・ライティングボール」がオークションに登場しました。

過去のオークションでは20万ドル(現在であれば約2,900万円)の高値で落札されたこともあり、今回も大きな注目を集めています。

いったいなぜ、この古いタイプライターがこれほどの価値を持つのでしょうか。

目次

  • 商業生産された初のタイプライター「ハンセン・ライティングボール」とは
  • オークション市場での価値と現代への影響

商業生産された初のタイプライター「ハンセン・ライティングボール」とは

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1890年のラスマス・マリング=ハンセン / Credit:Wikipedia Commons

ハンセン・ライティングボールは、デンマークの教育者であり発明家のラスマス・マリング=ハンセンによって、1865年に開発されました。

彼は、聴覚障がい者のための効率的な筆記手段を模索する中で、独創的なタイプライターの設計に着手しました。

この機械は、素早く文字を記録することを目的として考案されました。

その結果、私たちが見慣れた四角いキーボードとは異なり、球体の表面に54個のキーが配置されているという特殊なデザインが誕生しました。

この球体状の配置は、当時画期的でした。

指の動きを最小限に抑えることで、素早くタイピングできるように設計されているのです。

母音を左手、子音を右手で打ち分けることで、スムーズな文章作成が可能になります。

キーを押すと自動的に紙へインクが転写される仕組みになっており、効率的な文章作成が実現されました。

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ハンセン・ライティングボール / Credit:Auktion Team Breker