藤枝東高は、元日本代表FW中山雅史(現アスルクラロ沼津監督)を筆頭に、浦和レッズ一筋の現役生活を送ったMF山田暢久(現ガナドールFCコーチ)、元日本代表主将のMF長谷部誠(現フランクフルトU-21アシスタントコーチ兼日本代表コーチングスタッフ)、元日本代表MF山田大記(現ジュビロ磐田クラブリレーションズオフィサー)、元U-20日本代表MF河井陽介(現J2カターレ富山)らを輩出している。
一方、越境入学の縛りがない強豪私立高サッカー部は、全国から有望選手を集めることが可能だ。入学金や授業料を免除した上、寮も完備した「特待生制度」をフル活用し強化を進めている。その中にはサッカー部員が3桁にも上る高校も珍しくない。
高校無償化は公立高にも私立高にも適用されるため、この私立高の特待生制度を使った勧誘が難しくなる。一見、条件は同じようにも思えるが、サッカー選手として少しでも高いレベルで競争したいという意思を持つ中学生が進路を選ぶ際、親の金銭的負担が同じなのであれば、強豪私立高サッカー部を選ぶのが自然なことだろう。
一方、前述の藤枝東高や、同じ静岡県立の清水東高校、静岡市立清水桜が丘高校(かつての清水商業高校)、さいたま市立浦和南高校、習志野市立習志野高校、船橋市立船橋高校、滋賀県立野洲高校、広島県立広島皆実高校など、全国高校サッカーを制したこともある公立の名門高にとっては、選手獲得の面において強豪私立高に後れを取ることになることが予想される。

練習環境においても差は開く一方に
さらに授業料の無償化によって、これまでは保護者が教育費に充てていた金銭的負担が減り、その分をサッカー関連の費用(遠征費や用具代など)に回すことも考えられる。
これにより、私立高サッカー部員のレベルアップや競技環境の向上が期待でき、さらなる強化に繋がるだろう。この現象は経済的に余裕のある家庭に偏る可能性もあり、低所得家庭に育った選手との格差が広がるリスクもあるのだ。