VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)の進化により、視覚や聴覚を通じた没入体験は劇的に進歩しました。
しかし、五感のうちの2つの感覚、視覚と聴覚を使ったものでしかありません。
その他の、嗅覚、味覚、触覚を技術的に再現し体験させる技術は、あまり研究が進んでいません。
そんな中、2025年2月28日に発表された米国オハイオ州立大学と中国・大連理工大学の研究チームの研究は、デジタル世界で味覚を感じる技術に挑戦しています。
彼らが開発した「e-Taste(イーテイスト)」は、ネットを通じて離れた場所にいる人に同じ味を共有できる画期的なシステムだといいます。
この技術が普及すれば、これまで想像もできなかった「デジタル試食」の時代が到来するかもしれません。
味覚のデジタル化がもたらす新たな体験
ネット上で味が共有できる。それは多くの人が夢見るものの1つです。
こうした技術を実現するためには、味という情報をデジタル信号に変換する技術と、その信号を受け取って元の味を再現するためのデバイスが必要になります。
「e-Taste」は、こうした味をデジタル化して再現する一連の機能を備えたシステムだという。

まず、食べ物の味を専用のセンサーで感知し、その情報をデジタル信号に変換します。
次に、ユーザーが装着する小型のデバイスが、舌に微量の液体を供給することで、味の感覚を再現します。
この技術では、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五種類の基本味を、グルコース(甘味)、クエン酸(酸味)、塩化ナトリウム(塩味)、塩化マグネシウム(苦味)、グルタミン酸ナトリウム(うま味)を用いて再現します。
これらの化学物質を適切なバランスで組み合わせることで、単純な味だけでなく、より細かい味の強弱や微妙なニュアンスをデジタル化することが可能になるのだとか。