アメリカのロチェスター大学(UR)など複数機関の共同研究によって、光がわずか数百ナノメートル幅の三つのスリットを通過する際に、隣接するスリットの近くへまるでループを描くかのように回り込みながら、干渉パターンを形成する不思議な現象が初めて明確に示されました。

従来の二重スリット実験以上に複雑な経路の重ね合わせが観測されたことで、量子力学の根幹であるボルン則があらためて検証されると同時に、近接場(ナノスケールの電磁場)の寄与が思いのほか大きいことも判明し、量子光学の理解を大きく進める結果となりそうです。

いったいこの“三重スリット”の実験は、私たちの常識をどのように覆すのでしょうか?

研究内容の詳細は『Nature Communications』にて発表されました。

目次

  • 二重スリットを超えて—量子の深淵を覗く三つ目のスリット
  • 三重スリットでループする光たち
  • 五重スリットはさらにヤバい?広がる量子干渉の可能性

二重スリットを超えて—量子の深淵を覗く三つ目のスリット

三重スリット実験で見えた「光のループ経路」
三重スリット実験で見えた「光のループ経路」 / 三重スリット構造の模式図と、光が“ループ軌道”をたどるイメージ。 左右に並んだ3本の細いスリットが金属薄膜に空けられており、真ん中の赤いラインは光がAというスリット近傍からBやCのスリット方向に“回り込む”ように進むルートを描いています。通常の二重スリット実験では考えにくい複雑な経路ですが、金属表面で強く励起される『近接場(表面プラズモン)』によって、こうした微小な“寄り道”経路が大きくなり、観測可能な干渉パターンとして現れるようになります。幅が数百ナノメートル(髪の毛の太さよりずっと細い)という極めて小さなスリット構造と、光が波として振る舞う性質が組み合わさることで、量子力学の新たな一面が見えてくるのです。/Credit:Omar S Magaña-Loaiza et al . Nature Communications (2016)