R&D SPORT設計のシャシー
ここでBRZ GT300の基本形をおさらいすると、キャビン周辺は市販車両のBRZのモノコックを使用している。このモノコックにR&D SPORTがオリジナルで設計しているパイプフレーム構造の前後シャシーを接続している。サスペンションはリンク構造によるウイッシュボーン形状とし、ダンパーは地面と並行にレイアウトするプッシュロッドレイアウトになっている。

今季のマシンも基本形は同じスタイルで、前述のように剛性面を変更して設計し直しているわけだ。シャシーが変更されたことでエンジン搭載位置も多少の変更があった。ただできるだけ低く、そして後方へという考え方に変更はない。またサスペンションの取り付け位置も変更されているが、主にフロントタイヤがレギュレーションの変更で小径化されるための対応の意味も持っている。
タイヤの変更は、GTA規則でフロントが300-680-18で、横幅が330サイズから300に狭くなり、タイヤ径も710から680へと全体が小さくなっているのだ。ちなみにリヤは変更なく330-710-18のままだ。
タイヤが小径となることで接地面積は小さくなり、エアボリュームも減る。そのため従来どおりの性能をどうやって出していくか?は今季の一つの鍵になるのは間違いない。
ダンロップタイヤを継続して採用し、タイヤ設計エンジニアには結果を期待したい。またホイールも小径化に伴いBBSが従来と同じ剛性、ジオメトリーとなるように新規設計している。そのため、ディクス面のデザインが前後で異なっている。
幅が狭くなることでスクラブ半径は移動するので、合わせるためにもオフセットの変更は必須要件になり、ディスク面のデザイン、形状が変わっている。さらに剛性も同等に仕上げることはBBSの知見が投入されているというわけだ。
ブレーキ、ミッション、PCUの変更
ジオメトリーでは当然タイヤ径が変わることで車高が変わってしまうが、このR&D SPORTオリジナルシャシーはそうしたジオメトリー変更の作業性の良さもメリットのひとつになっているのだ。実際のレースでも公式練習のタイミングで、車高の変更やキャンバー、キャスターなどの変更は行なっており、さらに、それぞれのジオメトリーを独立して変更できることも、このシャシーの性能の一つになっている。

ブレーキがエンドレス製に変更された。ただ、シェイクダウン時はリヤのブレーキセットが間に合わず、従来のままテストを行なっていた。またブレーキのABSコントロールユニットも検討していくとしていた。
トランスミッションも変更している。ご存知のようにトランスアクスル・レイアウトのBRZ GT300だが、ミッションは6速ヒューランド製のドグミッション。パドルシフトはエアシフターを採用していたが、今季は電気モーターのシフターへ変更している。

モーターとすることでエアシフターよりレスポンスは速くなり、適合がうまくできれば、確実に速くなるという。

エンジン系では制御変更を行なっている。エンジン本体は従来どおりEJ20型ターボで変更はない。そのエンジン制御はMoTECからコスワースPIのPCUに変更している。変更理由のひとつに制御因子を拡大することができることがある。そのため通信システムの変更があり、従来のCAN通信から、一部にイーサネット通信を採用している。イーサネットとすることで、通信容量の拡大とスピードアップが期待できるため、PCUの変更が可能になった。
燃料に関しては現状GTAからはアナウンスがないため、前年と同様のCNF50%の燃料で適合させている。ターボエンジンではオイル希釈の影響が大きいというチームもあり、CNFは50%とされている。ちなみにGT500クラスは100%CNFでレースをやっているのだ。