令和4年度末で、全国の管径2メートル以上の下水道管路の総延長は約9790キロメートル(全体の2%)で、そのうち標準耐用年数50年を経過した下水道管路は、延長約1200キロメートル(総延長の約10%)。それが20年後は約5700キロメートル(約60%)に拡大する――さる2月21日、埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて、国土交通省が開いた第1回「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」で、そんな深刻なデータが報告された。

 しかも標準耐用年数が50年とはいえ、敷設後40年を経過すると、陥没箇所数が急増する傾向があるという。国交省が「社会資本メンテナンス元年」と定めて、国土交通大臣を議長に「社会資本の老朽化対策会議」を設置して対策を進めたのは2013年。それから9年後の令和4年度に、下水道管路に起因する道路陥没が全国で約2600件発生している。

 しかし、都心部では埋設物が多いなど道路の開削が困難な現場も多いうえに、今後30年以内に大規模地震の発生する確率が70%と予測されている。下水道管のメンテナンスに問われているのは、道路の非開削による工事の簡易化と耐震化である。

 この2つの課題を克服した管更生工法を取り扱う1社が、クボタの子会社・クボタケミックス(兵庫県尼崎市)だ。同社は「EX工法」と「ダンビー工法」という2種類の工法を提供している。いずれも既存管の内側に、下水道管として50年以上の使用実績のある硬質塩化ビニル製の管を敷設する工法で、EX工法は小口径(直径10~60センチメートル)、ダンビー工法は大口径(80センチメートル~3メートル)に適用する。さらにダンビー工法は、口径が四角形や馬蹄形など円形でない形状にも対応できる。

 道路を開削すれば、下水道管の工事の後は、開削した箇所を埋め合わせて、さらに舗装工事を行うが、非開削方式では、その工程が発生しない。耐用年数はEX工法、ダンビー工法とも50年である。

新たに塩ビ管を作るイメージ

 同社事業企画部の間野敦之土木・プラントグループ長は、工法のイメージを次のように説明する。

「下水道管のパイプにはコンクリート製のヒューム管がたくさん埋まっていて、老朽化によって硫化水素が発生すると、ひび割れが起きて土砂が流入して道路が陥没する。この古くなったヒューム管の内側に新たに塩ビ管を作るイメージである」

 それぞれの工法について施工の流れを説明しよう。EX工法は塩化ビニル樹脂のパイプを既設管の中に引き込んで、新しい管路を形成する工法である。施工は(1)洗浄(2)パイプ予備加熱(3)パイプ挿入(4)パイプ形成という流れで行う。まず下水道管の本管と取付管(各家庭や工場との間に取り付ける管)を止水したうえで、高圧洗浄車からマンホールを通じて区間内の滞留物を高圧ジェットで除去する。次にパイプウォーマーにパイプ(塩ビ管)をセットして加熱・軟化させ、パイプをマンホールから管内に挿入する。

 その後、ボイラー・コンプレッサー車からマンホールを通じてパイプを加熱拡張して、既設管に密着させてからエアーで所定の温度に冷却して固める。そして既設管の中に新しい管ができあがる――ほかにも治具の取り付けなど細かな工程があるが、EX工法は、おもにこうした流れで施工する。

「使用する管は塩ビなので化学反応を起こさないうえに、工場出荷時の品質が維持され、ある程度の曲がりにも対応できるので、いろいろな現場に対応できる。耐震性については、継手のない一本管なので、国土交通省が定めるレベル2地震動(対象地点で現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動)に耐えられる基準を満たしている」(間野氏)