近年、SNS上での怒りの拡散は、この人間本来の感情表現に根ざした現象だと考えられています。

しかし、怒りは人間に向けられて初めてその効果が発揮されます。

人間同士の対話では、共感や社会的承認が得られ、心の負担が効果的に解放されるのです。

正義感や規範を守ろうとする怒り、共感や賛同を求める怒り、さらには謝罪や反省を促す怒りは、物に向けられても意味を持たず、対人関係でのみ効果を発揮します。

また、AIチャットボットに怒りをぶつけても、「機械に向かって怒りをぶつけても本当に伝わるのか?」という疑問が生じ、人間相手ほどの感情の発散が期待できません。

一方、恥ずかしさを感じる場面では、他人からどう見られるかや評価されるかが大きな問題となります。

たとえば、「初歩的な質問をして笑われたらどうしよう」や「周囲がみんな接種しているのに自分だけ迷っていると知られたら恥ずかしい」という不安があります。

このような場合、AIチャットボットなら「機械だから評価されない」という安心感が得られ、匿名性も高いため心理的な負担が軽減されます。

つまり、怒りには「共感を得たい」「本音をしっかり聞いてほしい」という欲求が働くため、人間相手が選ばれやすいのです。

反対に、恥ずかしさや気まずさが先立つと、「他人の目を避けたい」「失敗や無知をさらけ出したくない」という気持ちから、余計な気遣いが不要なAIが好まれます。

こうした感情の方向性の違いが、どちらに相談するかを大きく左右していると考えられます.

AI×人間:感情に合わせた新時代のサポート論

AI×人間:感情に合わせた新時代のサポート論
AI×人間:感情に合わせた新時代のサポート論 / Credit:Canva

今回の研究が明らかにしたのは、私たちの「怒り」や「恥ずかしさ」といった感情が、単に気分を左右するだけでなく、どこから情報を得たいか、どんな相手に話を聞いてほしいかという行動に大きく影響を及ぼすということです。