そして最後に、「ワクチン情報を得る際、AIチャットボットと人間スタッフではどちらが良いと感じたか?」を尋ねたところ、怒りを誘発する映像を見た参加者は「やっぱり人間相手の方が話しやすい」と答える傾向が強く、逆に恥ずかしさを感じる映像を見た参加者は「AIチャットボットなら気を使わずに済む」という意見が多く寄せられました。
中立的な映像を見た参加者には、怒りや恥ずかしさといった強い感情はあまり現れず、相手が機械か人かで大きな差は見られませんでした。
つまり、「恥ずかしい」話題はAIに、「怒り」の感情は人間にぶつけるという具合に、参加者の心理状態と対話相手の組み合わせによって満足度やワクチン接種意向が大きく変わることが示されたのです。
キレるなら人間、照れるならAI!驚きの心理メカニズム

怒りを感じたとき、多くの人は誰かに話を聞いてもらい、「あなたの気持ちはわかる」と共感してもらいたいと望みます。
これは、感情を吐き出し、相手の反応から安心感を得るという自然な心理です。
特に、相手が人間であれば、声のトーンや表情、言葉のニュアンスから「自分の怒りをしっかり受け止めてくれている」と感じやすいのです。
また、進化の過程で人間は、集団内の規範を守り、秩序を維持するための仕組みを発達させてきました。
怒りは、社会規範に反する行動への警告信号として機能し、不正や異常に対して集団が一致団結して反応する手段となっています。
さらに、怒りを表明することで、自分と同じ価値観や信念を共有する人々から「私も同じだ」と共感や賛同を得られ、承認欲求や自己肯定感が満たされます。
加えて、怒りを表出すること自体が心理的な浄化、いわゆるカタルシス効果をもたらすとされています。
怒りをぶつける相手のリアルな反応、たとえば謝罪や反省、場合によっては怒りから快感を得ることもあるのです。