地球上では多くの生命が月の満ち欠けにあわせて行動することが知られています。
ウミガメやサンゴなどが満月の夜に卵を産むことを知っている人も多いでしょう。
人間の月経周期が満月に影響されるかは議論がありますが、いくつかの研究では、女性ホルモンは月の満ち欠けに大きく影響を受けており、満月の前後で生理が多くなると報告しています。
月の満ち欠けは29.5日のほぼ完全なサイクルをしているため、多くの種が生殖のタイミングを計るために利用しているのです。
しかしここで大きな疑問が出てきます。
月の光は太陽光の40万分の1しかありません。
イソツルヒゲゴカイたちをはじめ、月のサイクルを利用している生命たちはどのような仕組みで強い太陽光に惑わされることなく、柔らかな月の光を検知しているのでしょうか?
月の光だけを認識する特殊な仕組み

イソツルヒゲゴカイたちは、どうやって月光だけを認識しているのか?
研究者たちが着目したのはクリプロクロムと呼ばれる、青色に反応するタンパク質の一種「L-Cry」でした。
これまでの研究により、クリプトクロムは脊椎動物、昆虫、サンゴ、そして植物や一部の藻類など幅広い種で「概日リズム(体内時計)」の調節に役立っていることが知られています。
また2022年に行われた研究では、このクリプトクロム「L-Cry」が月光と太陽光の区別に使われている可能性も示されています。
そこで今回、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツの研究者たちはL-Cryの分子構造を調べ、イソツルヒゲゴカイたちが月光だけを検知する仕組みを解明することにしました。