先に述べたように量子もつれでは「一方が縦揺れならばもう一方は横揺れ」というような関係だけが見えない糸で結ばれています。
そして一方の観測されたという情報は見えない糸を伝って瞬時に転送され、もう一方の状態を確定します。
ある意味で量子もつれは、宇宙全体を紐に使った糸電話のような仕組みとも言えるでしょう。
ここで重要になるのが、外部からの干渉です。
観測を行うまでは送信者側にある粒子の情報も受信者側にある粒子の情報も宇宙に存在していません。
今回の研究では、送信者側にある粒子に対して「量子もつれが壊れない程度の強さ」で外部からの操作を行って、強制的に粒子の状態(を縦揺れか横揺れかなど)を自由に変化させる方法が使われました。
受信者が観測する前に、送信者側で結果の操作を行うわけです。
すると送信者側の粒子の操作によって、受信側の粒子の状態も変えることが可能になります。
八百長のように思える仕組みですが、こうすることで送信者の元にある光子の状態と送りたい画像の情報の内容をリンクさせることが可能になります。

たとえば「縦揺れを1」「横揺れを0」のように粒子の状態を特定の意味に当てはめることで、送信者側の持つ画像データを受信者側に情報としてテレポートことが可能になります。
今回の研究では、この光子の操作や情報の変換には「非線形検出器」と呼ばれる装置が用いられました。
ここで着目したいのは、このデータの転送が起こる時、送信者側と受信者側の間には電波や電線や光ファイバーなど、いかなる情報伝達の手段も存在しないことです。
粒子が縦揺れか横揺れかの情報は、宇宙の裏側に張り巡らされたかのような「見えない関係性の糸」を使って瞬時にテレポートするからです。