次に心身ともに健康な31名の男性(平均26歳)を対象に、女性の涙生理食塩水のいずれかの匂いを嗅いでもらいます。

涙と生理食塩水はガラス瓶の中に入れられ、それぞれ1回につき35秒間嗅いでもらい、これを複数回繰り返しました。

匂い自体は2種ともに無臭で、被験者の男性は自分がどちらを嗅いだのかは分かりません。

続いて、被験者は女性の涙か生理食塩水のいずれかを染み込ませたパッドを鼻の下に付けた状態で、攻撃性を誘発するよう設計されたコンピューターゲームに取り組みました。

このゲームは心理学実験で用いられるポイント減算攻撃パラダイム(PSAP)と呼ばれるものの一種で、参加者はできるだけ多くのお金を稼ぎ、終了後には実際に獲得した分のお金を報酬として受け取れます。

PSAPは実験ごとに異なるバージョンが作られますが、今回のゲームは2つのボタンを5秒間押し続けることでお金を獲得し、突発的に「挑発イベント」と「報復イベント」という2つのイベントが発生するという形式になっています。

挑発イベントでは参加者のお金が対戦相手から不当に減らされます。そして報復イベントでは、自分の利益には出来ないが対戦相手の所持金を仕返しに減らす(差し引く)ことができますが、復讐せずに無視してお金稼ぎに集中することも出来ます。

実験では被験者に「このゲームは目には見えない実在のプレイヤー(実際は架空の人物)との対戦形式だ」と告げられますが、実際には人間の対戦相手はおらずコンピュータが相手です。

そしてランダムな抽選で、一方が先に対戦相手のお金を「奪う」立場になり、もう一方はその後に相手の持ち金を「差し引いて」復讐できる立場に割り当てられます。

ただ、この抽選も実際はランダムなものではなく、被験者が必ず後者の立場になるよう設定されています。

そして被験者の攻撃性は、自分のお金を減らされたことに対する相手の持ち金の「差し引き(=報復)」を実行した回数によって評価されました。