天文学界を熱狂させた探索

 ルヴェリエの計算に基づき、多くの天文学者がヴァルカンの存在を証明しようと試みた。太陽に近すぎるため通常の観測では確認が難しかったが、日食時に太陽の光が遮られるときが観測のチャンスとされた。1859年、フランスの天文学者が「黒い影のような天体」を見たと報告し、一気にヴァルカンの存在説は広まった。

 しかし、その後の観測では決定的な証拠が得られなかった。報告される目撃情報は不確かで、観測のたびに位置や軌道が一致しなかった。やがてヴァルカンの存在に疑問が持たれ始め、多くの科学者が懐疑的になっていった。