それよりも一企業であるセブンの買収に関して6か月かかって話が振出しに戻る、では話にならないと思います。アメリカのビジネスのスピード感に対して遅々として進まない日本のビジネス判断は一言、「とろい」と思います。

次に日鉄ですが、トランプ氏の裁定後に日鉄がいったいどういう出資を考えているのか見えてこない、これが懸念材料です。日鉄-USスチールの今の状況を一言で述べると「こんがらがった釣り糸」では魚は釣れない、であります。おまけにここに来て全米鉄鋼労働組合がUSスチールを相手取り、第三者機関に告発を行ったと報じられています。組合員にUSスチールが圧力をかけたというもの。またライバルのクリフス社のゴンカルベスCEOが「日鉄は荷物をまとめて出ていけ」と発言しています。これらは嫌がらせでしかなく、クリアできないわけではないのですが、日鉄のビジネス判断として思った以上に付帯リスクが出てきている中でUSスチールを得るメリットがまだあるのか、再考の時期にある気がします。

日本製鉄 Wikipediaより

日鉄が経営資源を投入してこの一連のごたごたを解決して投資収益を上げるにはうまくいって10年かかるでしょう。その粘りと我慢の経営を日鉄がし続ける価値があるかです。今見えるのは経営権は取れない、です。しかもその行く手の困難さはブリヂストンによるファイアストン買収の時よりはるかに困難だという点です。話がストレートに決まるならそれは私もうれしい話ですが、ここにきて何か無理がかかり過ぎている、これは前述のセブンの伊藤興業による買収提案と同じ構図に見えます。

最後に日産自動車ですが、この会社の最大の問題は従業員と共に協力会社にTier1から3までに19000社ある点です。自動車産業のピラミッド構造そのものが日本の雇用問題に直結する、だからこそ経産省は躍起になるのです。ところが経営陣が最優先して議論しているのは権力闘争です。この会社を買収する企業があるとすれば相当勇気があるでしょう。それこそゴーン氏のような強者が現れないと厳しいと思います。内田社長の退任は既に既定路線で暫定CEOはエグゼクティブとしてはまだ日が浅く、ホンダとの合弁推進派であるジェレミー パパンCFOとなりそうです。その間、アメリカの主要格付け3社は同社の格付けを投機的レベルに引き下げてしまいました。

日産HPより