これ自体はコスト面では大きな利点をもたらすものの、製造環境や検査体制が国によってどのように異なり、それが製品の品質にどう影響しているのかは、いままで十分に明らかにされてきませんでした。

今回の研究は、まさにこの「どこで作っても本当に同じなのか?」という疑問に正面から取り組むものです。

ジェネリック薬は同じ成分であればすべて等しいかのように扱われてきましたが、実は製造される工場の所在地や品質管理の実態によって重篤な副作用のリスクが違う可能性を探るため、研究者たちは膨大なデータを駆使して分析を行いました。

これまで開示されてこなかった薬品の製造工場情報を独自の方法で突き止めたことで、ジェネリック薬の「見えにくかった部分」に光を当てたのです。

ジェネリック医薬品はコスト競争で質が低下するリスクがある

ジェネリック医薬品の闇:研究が示す衝撃的結果
ジェネリック医薬品の闇:研究が示す衝撃的結果 / Credit:Canva

研究チームはまず、医薬品の製造工場を特定するために「Structured Product Labeling」と呼ばれる公開データを活用しました。

通常、どの工場で薬が作られているかは情報公開が限られているのですが、このデータをうまく解析することで、同じ成分・用量・剤形(たとえば錠剤やカプセルなど)でありながら、アメリカ国内で製造されたものと、インドをはじめとする新興国で製造されたものを正確に区別できるようにしたのです。

次に研究者たちは、米国食品医薬品局(FDA)が運用する「FAERS(Adverse Event Reporting System)」という副作用報告のデータベースを利用しました。

これは、医師や患者などが実際に経験した副作用を記録する大規模なシステムです。

そこで特に「入院」「重度の障害」「死亡」といった深刻な結果をもたらす重篤な副作用に絞って、インド製ジェネリックとアメリカ製ジェネリックを比較しました。

今回の分析では合計2,443種類のジェネリック薬が対象となりましたが、そのうち新興国で製造されたジェネリックの大部分(約93%)がインド製だったため、事実上「インド製 vs. アメリカ製」の比較となりました。