クマムシは体長1ミリにも満たない微小な生物ですが、極端な環境に耐え抜く驚異的な能力を持っています。
真空の宇宙空間、極寒の南極、灼熱の砂漠など、あらゆる環境で生き延びることが可能です。
さらに米マサチューセッツ工科大学(MIT)の最新研究により、クマムシが放射線治療の未来を変える兆しが新たに見えてきました。
研究チームは、クマムシが持つ特殊なタンパク質「Dsup」をマウスの組織内に発現させることで、放射線によるDNAの損傷を大幅に抑えられることを実証したのです。
このクマムシパワーを応用することで、がん患者を放射線の副作用から守れるようになるかもしれません。
研究の詳細は2025年2月26日付で科学雑誌『Nature Biomedical Engineering』に掲載されています。
目次
- 放射線治療のダメージとは?
- クマムシパワーでDNA損傷が50%も低減!
放射線治療のダメージとは?
がん治療には、外科手術、化学療法、放射線治療などの方法があります。
特に放射線治療は、がん細胞のDNAを破壊し、増殖を抑える効果が知られています。
その反面、放射線はがん細胞だけでなく、健康な細胞にも深刻な損傷を与えるという大きな課題がありました。
例えば、頭頸部がんの患者では、放射線の影響で口内炎や喉の炎症が発生し、食事を摂るのが困難になることがあります。
また消化器系のがんに対する放射線治療では、直腸出血などの副作用が問題になります。
他にも放射線の副作用は、脱毛や下痢、食欲不振、疲労感、感染や出血しやすくなるなど、多岐にわたります。
そのため、多くの患者が治療の途中で苦痛に耐えられず、中断せざるを得なくなるケースがあるのです。

一方で、これまでにも放射線によるダメージを軽減するための薬剤が開発されてきました。
例えば、前立腺がんの患者に対しては、前立腺と直腸の間にハイドロゲルを注入し、物理的なバリアを形成する方法が用いられています。