しかも、時間の制限があるかどうかや、被験者自身の思考スタイル(理性的・直感的)の違いはほとんど影響しなかったといいます。
研究者たちは、この傾向を「Ugly Leniency Effect(不魅力への寛大効果)」と名付け、「魅力を使う犯罪のシナリオ(例:デート商法)に限っては、外見が整っていない人ほど有罪判定を回避しやすい」と結論づけました。
研究を主導したアントニオ・オリベラ=ラ・ローザ教授(コロンビア・ルイス・アミゴ大学)は、この“ブサメン寛大効果”を「人が外見から推測する犯罪のやりやすさ」と関連づけて説明しています。
「デート商法など“魅力的に見せる”ことが犯行手口に含まれる場合、見た目に恵まれていない人はそもそも詐欺を成立させにくいはずという思い込みが働きやすいのです。結果として、顔の魅力が低い人に対し『この人はたぶん犯人じゃないだろう』と直感的に思ってしまうのでしょう。」
アントニオ・オリベラ=ラ・ローザ教授
つまり、「可愛い子やイケメンだと騙されやすい → 犯行成功しやすい → だからこそやりそう!」というステレオタイプの裏返しが、「そこまで魅力的ではない外見の人」に“同情的”な視線を向ける要因となっているようです。
実際、過去の別の研究では、詐欺で容姿が手口の一部になり得る場合、魅力的な被告のほうがむしろ罪深いと見なされて厳しく裁かれる(“Beauty Penalty”)現象が指摘されてきました。
今回の結果はその裏返しが起こり得ることを示していると言えます。
ただし、この研究をもって「現実の裁判でも外見が冴えない被告が常に有利になる」と断定するのは早計です。
論文著者たちも以下の点を強調しています。
1つ目は、今回の実験は第一印象の直感を測定しているという点です。
実際の裁判は第一印象だけで判決が出ることはなく、審理が進むにつれ、証拠や主張のやり取りで印象が変わりうるからです。