AESCの工場

まず、茨城県の友部にマザー工場を建設し、すでに第1工場が完成しており、第3工場まで建設される。現在は6〜7GWhの電力量だが、完成時には20GWhに達する。主に、ニッサン、ホンダ、マツダ向けに生産している工場だ。ちなみに、生産するNMCバッテリーはGen5で、現在ニッサンに納品しているGen4の次世代に相当するバッテリーになる。

AESC バッテリーから見る自動車産業の変革期
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

アメリカではスマーナに加えて、オハイオ州ボーリンググリーン工場でメルセデスベンツ向けに。サウス・カロライナのフローレンスにBMW向けの生産工場の建設を予定している。いずれも2026年には稼働予定で、それぞれ40GWh、50GWhの電力量を生産する。

英国では既存のサンダーランド工場に加えて、新規に工場を建設し、ランドローバー向けのバッテリー生産を予定している。フランスではデュエイのルノー工場に隣接して工場を建設中で、2025年度中に40GWhを生産する。そしてスペインのエクストラマドーラにも建設中で2026年に稼働予定だ。

中国では既存の3箇所に1つ加えて4箇所の工場を稼働させる。江蘇州の江陰(コウイン)市、内モンゴルのオルドス、湖北省の十堰(じゅうえん)市、河北省の 滄州(そうしゅう)市の工場から中国車向けのバッテリーを生産する体制としている。

AESC バッテリーから見る自動車産業の変革期
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

全工場が完成し稼働するとグローバルでAESCは200〜300GWhの総電力量を生産することになる。ちなみにGMはアルティウムバッテリーを、EV100万台生産するとして130GWhを予定しており、フォルクスワーゲンは欧州内で240GWhを調達予定としている。ステランティスグループでは130GWh、そしてニッサンはAESCとCATLから135GWhを調達としているのだ。

バッテリー本体の傾向

さてバッテリー本体の傾向では、ケミカルの観点からはNMCとLFPが中心で、NMCの三元系はエネルギー密度が高く高級車向けになる。LFPはエネルギー密度が低く、反面安全性は高い。そして安価のため大衆車や定置型向けになる。

AESC バッテリーから見る自動車産業の変革期
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

形状では大きく分けて4タイプ。現在主流のパウチ型は重量、サイズ、放熱性、スペース効率に優れているメリットがあり、角形は金属の缶に覆われているため機械強度に優れている。そして円筒型製造コストが抑えられ安価にできるメリットがある。これはテスラが採用したことで広く知られることになったが、当初は1865型で直径18mm×全長65mmという乾電池レベルのサイズからスタートしている。その後2170型が主流となり、サイバートラックには4680型が搭載されている。またこれからデビューするマツダ、スバルのEVもこの円筒型をパナソニックから調達する契約は発表されている。

そして全固体電池となるが、全固体電池はまだ実用域には到達できておらず、開発中のバッテリーで20年代後半にスポーツカー向けに供給される予定だ。

そしていずれもが材料にニッケル、マンガン、コバルト、銅、などのレアメタル、重希土類が使用されており、その多くが中国から供給を受けるという、サプライチェーンの歪みが存在しているのだ。正極材、負極材がコストの7〜8割を占めると言われるが、これらの材料を中国に依存している現状がある。そうした課題も地産地消を進めていく中で、中国への依存度を下げることは視野にあるのは言うまでもない。