日本の会計基準では、評価替え益は「本業の儲け」ではない。よって、営業「外」損益とするのが一般的だ。だが、IFRS基準では
「何を本業とするか」
は経営者の裁量に委ねられる。結果、同じ「営業利益」という科目名でも内容はさまざま。多様な営業利益が存在するのである。国際会計基準審議会(IASB)の調査によると、少なくとも「9つの異なる方法」で営業利益が算出されているという。
今回、黒字化した楽天の営業利益も「一般的な営業利益とは違う」ということを認識しておく必要がある。
次に、単月黒字化したという指標「EBITDA」について見てみよう。
EBITDAは黒字判定に適するか
24年12月、楽天モバイルは23億円の単月黒字化を達成している。

楽天グループ株式会社 2024年度第4四半期決算説明会 プレゼンテーション資料より(2025年2月14日)
楽天グループ代表取締役の三木谷氏が以前から目標としていたのが、この「単月黒字化」だった。今回黒字化したのは、「営業利益」ではなく「EBITDA」であることに注意を要する。
EBITDAとは――粗く言えば――営業利益に減価償却費を足したものだ。減価償却費を無視した営業利益と言っても良い(当然、営業利益より額は大きい)。利益を測る指標というより、キャッシュの獲得能力を測る指標だ。楽天自身も決算短信にこう記載している。
「EBITDAは当社グループの事業活動におけるキャッシュ・フロー創出力を評価する指標として有用と判断しています」
楽天グループ株式会社 決算短信より
では、このEBITDAは楽天モバイル「黒字化」の指標として適切か。否である。楽天モバイルは、減価償却を軽視してはいけない企業なのだ。
減価償却とは、投資した額を、使用する年数(耐用年数)に分割して費用化することを言う。仮に、1兆円の設備を購入し10年間使うのであれば、減価償却費は毎年1000億円ずつ、10年間計上される(※)。