その後も、独ミュンヘンで開催されている安全保障会議(14-16日)で、米国のヴァンス副大統領が欧州大陸が直面する最大の脅威はロシアや中国ではなく欧州「内部から」来るものだと、欧州の民主主義を痛烈に批判した。
トランプ米政権とNATOや欧州連合(EU)側との軋みは深まるばかりだ。
「最初の衝撃」となった、ヘグセス氏の発言をかみ砕いて考えてみたい。
なぜ問題なのか
トランプ氏は「米国を優先する」と主張して大統領選に勝利した。このため、これに沿った政策を繰り出すだろうと大体の予測はできていた。バイデン前政権のようにはウクライナ支援を続行せず、手荒な交渉条件をウクライナに提示し、これを吞ませることでウクライナ問題を「解決する」のではないか。そのような懸念もあった。
今回のヘグセス氏の演説、そしてその後のトランプ大統領の言動を見ると、まさに「米国優先」が中心にあることが分かる。
なぜ問題なのか?
真っ先に頭に浮かぶのは、以下の点が「プーチン大統領が当初から望んでいたことを後押しする路線だから」だろう。
ウクライナが2014年以前の国境に戻ることは非現実的で、幻想的な目標 ウクライナのNATO加盟は現実的ではない
ロシアは2014年、ウクライナの一部であるクリミア半島を不当に併合。現在までに、ウクライナ領土の約5分の1を支配している。
主権国家であるウクライナの国土の一部が他国に併合されていても、この状態を「受け入れよ」とヘグセス氏は事実上提案していることになる。
日英の報道を見ると、「これが現実なのだから」「バイデン前政権も実はそう思っていたが、口に出して言わなかっただけ」と指摘する人もいた。
しかし、「これが現実なのだから」と割り切っていいものだろうか?
ウクライナのNATOへの加盟についてだが、プーチン政権下のロシアはNATOの東方拡大に危機感を持っており、ウクライナには絶対に加盟をしてほしくないと思っている。米政権に「ウクライナのNATO加盟は現実的ではない」と言ってもらえれば、渡りに船なのである。