その結果、私たちはスムーズに道を覚えたり、空間の配置を把握したりできます。

この「空間を把握する力」と「情報を覚える力」は深い関係にあります。

先に述べたようにこれまでの研究でも、メンタルアスリート(記憶力大会の常連選手)が場所法を使っている際に海馬が普段以上に活性化している様子が観察されました。

簡単に言うと、脳がもともと持っている“場所を覚える力”を利用し、そこに覚えたい情報を結びつけることで、通常の暗記よりも強力な記憶痕跡が残せるというわけです。

さらに興味深いのは、記憶の宮殿を活用する人々が、ただ思い浮かべるだけで実際に空間を歩くのと同じような脳の活動を示すこと。

私たちの脳は「イメージの世界」と「現実の空間」を意外にも近いメカニズムで処理していることがわかっています。

場所法によって家や道などのイメージをくっきり描くと、脳は“あたかもそこに実際にいるかのように”空間情報を扱おうとするのです。

こうした仕組みを踏まえると、“自分の頭の中にある空間”に情報を配置することが、いかにパワフルな記憶手段であるかが想像しやすいでしょう。

脳科学の最先端研究でも、海馬が記憶の形成と空間認知をつなぐ“架け橋”になっていることが示唆されています。

記憶の宮殿はまさに、この架け橋を最大限に活用した「人類の知恵の結晶」といえるのです。

チャンピオン直伝:今すぐ試せる記憶力アップのヒント

13.5秒で80個の数字を記憶した記憶力チャンピオンの記憶術とは?
13.5秒で80個の数字を記憶した記憶力チャンピオンの記憶術とは? / Credit:Canva

驚異の記憶力を誇るラジャクマールさんは、誰でも実行できるシンプルなコツをいくつか教えてくれています。

まず最も重要だと強調しているのが「水分補給」。

喉が渇くと集中力が途切れやすく、頭の回転も鈍くなりがちです。

日常的にこまめに水を飲むことで、読むスピードを維持し、考えをクリアに保てるといいます。

実際、プレゼン前や集中作業の前にコップ一杯の水を飲むだけでも、頭がすっきりして能率が上がると感じる人も多いのではないでしょうか。