後に専門家が調査したところ、それはなんと長さ約20センチ、幅約5センチもある化石化した人間の排泄物(コプロライト)でした。
建設予定地がロイズ銀行の支店だったため、いつしか「ロイズ銀行糞石」というインパクトの強い呼び名が広まっていきます。
見た目こそ地味な泥の塊ですが、ひとたび「人類史上最大レベルの糞」と紹介されると、多くの人が興味をそそられます。
実際に、これほど大きく完全な形で残っている人糞化石は世界的にも珍しく、発見当時から学者たちは「とんでもないお宝を掘り当てた」と大喜びだったそうです。
それまではバイキング時代の生活を示す遺物といえば武器や装飾品などが中心でしたが、まさか人糞が脚光を浴びるとは誰も想像していませんでした。
しかし、単に「巨大な糞だ」という面白さだけでなく、この糞石が注目されたもう一つの理由は、その保存状態の良さにあります。
普段であれば分解されてしまうはずの排泄物が、湿った泥炭層に埋もれていたことで腐らずに化石化していたのです。
これほど鮮明に残った糞だからこそ、後の研究でバイキングの食生活や健康状態まで推測できるようになりました。
つまりは“ただの排泄物”が、“歴史を語る重要な手がかり”へと早変わりしたわけです。
こうして「世界最大の糞」という衝撃的な肩書きとともに、ロイズ銀行糞石の物語は幕を開けることになりました。
バイキングの食事と健康を映す“化石”
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では、なぜこの糞がそこまで貴重で面白いのでしょうか?
その答えは、中に残された食べかすや寄生虫の痕跡にあります。
研究者たちが糞石を細かく分析すると、まず見つかったのは穀物や肉のかけらでした。
それから驚いたことに、果物や野菜、ナッツなどの形跡がほぼ確認されなかったのです。
つまり、この糞の主は主にパンや肉が中心の食事をとり、果物や野菜をあまり摂取していなかった可能性が高いと推測されます。