彼の側近や閣僚は必ずしもイエスマンだけではなく、前政権でもポンペオ国務長官やマティス国防長官のような戦略的思考を持つ人物がいた。今回の政権でも、トランプが軽視するイデオロギー的な思考。これをある程度重視するルビオ上院議員(対中強硬派)、ウォルツ下院議員(国防戦略)、ベッセント財務長官(経済政策)など、トランプとは異なる視点を持つ人物がいる。
歴史学者ニール・ファーガソンもNHKのインタビューで「ルビオとウォルツの考えは必ずしもトランプと一致しない」と指摘している。最終決定権はトランプにあるが、政権内部には異論もあり、一部の政策修正が可能かもしれない。
日本の視点:米中露と三国連携のリスク
日本にとって重要なのは、ロシア・中国・北朝鮮の三国連携が強化されることを防ぐことである。北朝鮮は、自国の兵士に嘘を付き、捕虜の証言があるように、前線に送り込んで犠牲にする。ロシア軍として戦うという恩を売り、ロシアと軍事協力を深め、北朝鮮に足りない核技術や戦争のノウハウを学んでいる。中国とは微妙な距離感を保っているものの、「反米勢力」として三国の協力体制を維持している。
この状況で日本がすべきことは、単に「トランプの対露政策」を批判するのではない。ウクライナ戦争の責任を米国に求めるミアシャイマー教授の理論を過大評価し、プーチンの侵略行為を正当化する風潮には警鐘を鳴らすべきだ。ワシントンでは彼の議論はほとんど取り上げられておらず、相手にされていない。筆者は現場取材を通じて、NATO東方拡大がプーチンの侵略を正当化する論理に利用されていることに強い疑問を持っている。米国などが民主化のために、援助をしつつ、圧力をかけることは無数にある。だが、どうするか、決めるのはその国の国民なのだ。「東方拡大しないと約束したが破られた。だからロシア自衛で動く必要があった」というプーチンの主張。各国には独立国としての主体性がある。国際政治に100対ゼロはない。プーチン軍侵攻直前に「米軍を覇権しない」と言ったバイデンのミスもあり、完全否定はできないが、ウクライナ紛争の責任はロシアではなく米国にあるというのは、飛んでもない詭弁だ。大国だけが各国の行先を決めるのではない。