なんだか、話だけ聞くと難しそうな気もしますが、研究では36人の参加者にこのデバイスを装着し、5日間使用の訓練を行ってもらいました

最初は多少、新しい親指に戸惑っといる実験参加者たちですが……

新しい親指にはしゃぐ実験参加者
新しい親指にはしゃぐ実験参加者 / Credit:Dani Clode Design and The Plasticity Lab, UCL

しかし、参加者たちは、すぐに新しい親指のコツを理解して、さまざまな動作について大幅な改善をすることができました。

カップを手に持ったままコーヒーに砂糖を入れてかき混ぜる、1つ余分にグラスを運ぶなどの運動タスクが可能になったのです。

親指が追加されるだけでさまざまな新しい動作が可能になる
親指が追加されるだけでさまざまな新しい動作が可能になる / Credit:Dani Clode Design and The Plasticity Lab, UCL

他にも、片手でペットボトルを持ったままキャップを開けたり、マジシャンみたいなカードさばきも可能です。

これまでもどかしかった片手の動作がすんなりと実行可能になる
これまでもどかしかった片手の動作がすんなりと実行可能になる / Credit:Dani Clode Design and The Plasticity Lab, UCL

素直に便利そうと感心してしまいますが、今回の研究者たちの関心はこのデバイスが脳に及ぼす影響です

研究チームは第3の親指を使用する前と後で、参加者たちの脳にどのような変化があったかを、fMRIを使って調査しました。

すると、驚きの発見があったのです。

それは拡張された体を利用することには、大きな代償が伴う可能性を示唆するものでした。

手腕切断よりも大きな脳への影響

fMRIの中で手を動かした時の脳の活動を調べた
fMRIの中で手を動かした時の脳の活動を調べた / Credit:Dani Clode Design and The Plasticity Lab, UCL

研究チームは、参加者が「第3の親指」を使用する前と後それぞれの、脳活動をfMRIの中で手を動かしてもらい調査しました。

すると、参加者たちは自分の手を精神的に表現して理解する指の神経表現が収縮していたのです。

指の神経表現に関する脳の活動が萎縮していた
指の神経表現に関する脳の活動が萎縮していた / Credit:Dani Clode Design and The Plasticity Lab, UCL