今回の研究では、まずテリア、コッカー・スパニエル、ボーダーコリーという3頭の“俳優犬”をモデルにし、それぞれが数秒おきにまばたきをする動画、鼻をなめる動画、そして何もせず静止している動画の合計3パターンを撮影いたしました。

いずれの動画も、短いクリップを編集し、犬がカメラ目線になるよう工夫したうえで、まばたきや鼻なめといった行動を明確に捉えられるようにしております。

次に、こうして作成された「まばたき動画」「鼻なめ動画」「コントロール動画」の3種類を、さまざまな犬種・年齢から集めた54頭の成犬にランダムな順番で見せ、その様子を観察いたしました。

観察の際には、犬のまばたきや鼻なめの回数、白目を見せる動作、姿勢の変化などの行動指標だけでなく、心拍数や心拍変動といった生理指標も記録し、各動画を視聴する際にどのような反応が起こるかを調べました。

ただし、なかには映像に興味を示さず居眠りしてしまう犬もあったため、最終的には起きていた犬のデータを中心に解析を進めました。

すると、最も顕著に現れたのは、他の犬がまばたきする映像を見ているときに自分のまばたきの頻度が増えるという結果でした。

特に、鼻なめ動画との比較では、まばたき頻度が統計的に有意な形で増加し、具体的には約16%ほど増える傾向が確認されました。

一方、鼻なめ映像を見たときには自分の鼻なめが顕著に増えるわけではなく、白目を見せる動きが若干増えるケースが見られましたが、それがストレスや不安を直接示すとは限らないことも分かりました。

さらに、心拍数や心拍変動に大きな乱れはなく、犬たちが比較的リラックスした状態で映像を見ていたことが推測されます。

つまり、今回の実験結果は、強いストレスによるものではなく、あくまでコミュニケーション的な要因として、犬が相手のまばたきを“まね”している可能性を示していると言えるでしょう。

小さなサイン、大きな意味―犬のまばたきから読み解くコミュニケーション

犬の「まばたき」に絆を深める効果があると判明
犬の「まばたき」に絆を深める効果があると判明 / Credit:Canva