ヒトや一部の霊長類において、相手がまばたきをすると自分も同じようにまばたきをしてしまう“同期現象”が報告されており、これはコミュニケーション手段の一つと考えられています。

ちょっとした目の動きが、実は「リラックスしよう」「仲良くしているよ」という雰囲気づくりに大きく貢献しているかもしれない――そう考えると意外に奥が深いですよね。

一方、犬の世界でも、あくびの伝染や“遊びに誘う顔”の模倣などを通じた「表情模倣」がさまざまな研究で示されており、相手の動作を真似することで緊張を和らげたり、遊びのルールを共有したりするとも言われています。

ただ、「まばたき」に関して同じように犬が“同期”したり“真似”したりするのかどうかは、これまで大きく取り上げられてきませんでした。

そこで今回の研究では、犬がほかの犬のまばたきを見たときに、自分のまばたきを増やすかどうかを本格的に検証することにしました。

もしヒトや霊長類と同じように“まばたきの同期”が確認されれば、犬は“まばたき”というわずかな動作を通じて「敵意はないよ」「ここは安心して大丈夫」というメッセージを送り合っているかもしれません。

普段は見過ごされがちな犬のまばたきが、実は犬同士の関係づくりや衝突を回避するための、とても重要なシグナルである可能性があるのです。

犬の「まばたき」が語る秘密

犬の「まばたき」に絆を深める効果があると判明
犬の「まばたき」に絆を深める効果があると判明 / この図(FIG3)は、犬の行動実験が行われた部屋のセットアップを示しています。 図の左上(A)にあるのはプロジェクターで、実験中に犬に映像を映し出す装置です。 図の中央または右側(C)には、プロジェクターからの映像が投影されるスクリーンが配置されています。 また、図の一部(B)には暗緑色のパネルが設置されており、床には白い点線が描かれていて、犬が立ち入ってはいけない区域を視覚的に区切っています。 さらに、図の一角(D)には、実験中に犬が水分補給できるように水飲み場が用意されている様子が描かれています。/Credit:Chiara Canori et al . Royal Society Open Science (2025)