2011年、照月氏ら研究チームは、生きたカイコガの触角を小型ドローンに搭載したバイオハイブリッドドローンを開発しました。

このドローンは、匂いの濃度や方向を高精度で識別しながら、匂いの源を探索することができました。

とはいえ、当時のドローンは、探索範囲が2m程度に限られていました。

そこで研究チームは、新しい研究により、この技術をさらに進化させ、探索精度を向上させることにしました。

進化したバイオハイブリッドドローンは探索範囲が2倍以上に

最新の研究で開発されたバイオハイブリッドドローンも、生きたカイコガの触角をセンサーとして利用しています。

今回の研究では、特に2つの改良が加えられました。

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昆虫の触角をもったドローンが進化 / Credit:照月大悟(信州大学)_照月大悟准教授ら、進化した次世代匂い追跡ドローンを開発し、昆虫の技術を駆使した世界最高性能モデルが新記録を樹立!(2025)

まず、「触角を覆う専用カバー」を開発しました。

カイコガは、羽ばたきによって気流をコントロールし、匂いが含まれる気流を自身の触角に選択的に誘導します。

一方でドローンは、プロペラ飛行による対称的な流れが発生するため、匂いの方向を判断するのは簡単ではありません。

そこで、専用カバーが役立ちます。

これを装着することにより、ドローンが飛行中に受ける気流の影響を抑え、匂いの方向をより正確に検出できるようになりました。

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ホバリングしながらの回転と直進を繰り返す新アルゴリズムを導入 / Credit:照月大悟(信州大学)_照月大悟准教授ら、進化した次世代匂い追跡ドローンを開発し、昆虫の技術を駆使した世界最高性能モデルが新記録を樹立!(2025)

次に、「戦略的に動きを停止する探索アルゴリズム」を採用しました。

昆虫は、匂いを探す際に動き続けることはなく、「停止」することが分かっています。

ロボットによる探索では、このポイントが見落とされがちでした。