「死は可逆的な状態である」 未来の医療の可能性

 パーニア博士は、「私たちが死について信じていることは根本的に間違っている」と語る。彼は、死を「不可逆的な終焉」ではなく、「適切な医療介入によって回復可能な状態」として再定義するべきだと考えている。実際に、低体温状態で6時間以上心停止していた患者が蘇生された事例も報告されており、これらのケースは、従来なら「死亡」とみなされていた状態でも、適切な処置を施せば回復の可能性があることを示している。

 しかし、こうした蘇生技術の普及には課題も多い。ECMO(体外式膜型人工肺)を用いた蘇生技術は、一部の病院では導入されているものの、医療資源や人手の問題により、すべての患者に適用することは困難である。また、倫理的な問題として、「どのような場合に蘇生を行うべきか」という判断も必要になる。例えば、高齢で多臓器不全を起こしている患者と、事故などで突然亡くなった健康な若者では、蘇生の優先度が異なる可能性がある。

「死は意識の終焉ではない」医師が語る蘇生医療の最前線、「死」の定義は変わるのか
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 とはいえ、パーニア博士は「未来の医学では、今日のCPRが一般的になったのと同じように、死亡したとされる患者を蘇生する技術が標準治療となる可能性がある」と述べている。現在の医学がまだ未解明の領域を多く抱えている中で、意識と死の関係についての研究は、今後ますます重要になるだろう。

 死は終わりではなく、新たな理解への入り口なのかもしれない。今後の研究の進展が、人間の生と死に対する概念を根本から変えていく可能性は十分にあるだろう。

文=深森慎太郎

提供元・TOCANA

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