また、競輪とオートレースは経済産業省が、ボートレースは国土交通省が、競馬は農林水産省が、 宝くじは総務省が、totoなどのスポーツ振興くじは文部科学省が所管し、それぞれが利権化してしまっている。そこに海外から民間企業が参入するとなれば、霞が関の常識からすれば「排除一択」になるのも分かる。

日本においてもカジノ建設の機運が高まり、2016年にIR法が施行されたが、あくまでカジノを中心に宿泊施設、会議施設、テーマパーク、商業施設などを一体的に整備する統合型リゾート(IR)という、出来るだけギャンブル色を薄めた名称で立案された過去がある。

欧州サッカー連盟(UEFA)写真:Getty Images

ギャンブルとスポーツの曖昧な境

欧州サッカー界では、スポーツベッティングも含んだオンラインカジノ会社が胸スポンサーに付く事例が頻出し、あまりにも増えすぎた。UEFA(欧州サッカー連盟)は主催大会(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグ)でのオンラインカジノ会社のユニフォームスポンサー掲出を禁止し、結果、胸スポンサーが空いたままのチーム同士が対戦するという奇妙な現象も起きている。

ちなみに、G7(日本、フランス、米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ)でスポーツベッティングを解禁していないのは日本だけだ。

この議論で必ず登場するのが「ギャンブル依存症」の問題だが、そこで既存のギャンブルが俎上に乗せられることは少ない。そもそも、既に日本はギャンブル大国だ。さらに寺銭(堂元の取り分)の行き先が国や地方公共団体であれば合法、そうでなければ違法という分かりやすい前提なら理解できるが、パチンコ・スロット業界は例外とされている。法の立て付けに一貫性がない。これではオンラインカジノやスポーツベッティングを禁じる法的根拠も薄くなる。検察庁が裁判に持ち込ませたくない理由もこの点にあると思われる。