キャッシュレス決済を取り巻く課題とは
——キャッシュレス決済にともなう社会課題にはどのようなものがあるのでしょうか?
我々がキャッシュレス事業を行うにあたり、課題に感じたポイントがおもに、
●フィッシング詐欺や不正利用の増加
●アナログシステムとの紐付けが不十分
●ID/管理の限界
この3つです。
日本でキャッシュレスが広がるとともに発生するであろう、このような社会課題を解決したいと考えたことが、我々がキャッシュレス決済に参入したきっかけでもあります。
実際、約10年前から徐々に「キャッシュレス」という言葉が浸透しはじめ、今ではだいぶ多くの場所で利用できるようになっています。しかし、その反面、不正利用やクレジットカードを使った詐欺なども増えてきました。
クレジットカードのID/パスワードが抜き取られてしまうフィッシング詐欺や、ID/パスワードを使った不正利用がダントツに多いです。とくに、QRコード決済が登場したことにより、不正利用の方法は多様化しています。
——アナログシステムとの紐付け、ID/パスワード管理の限界とは、どのような課題なのでしょうか?
アナログシステムとの紐付けの課題については、障がい者手帳を例にするとわかりやすいですね。
現状、障がい者手帳の情報とクレジットやキャッシュレスに必要な情報が紐付けられないので、障がい者手帳などを利用した割引を受ける場合は、アナログ決済に頼るほかありません。新幹線の予約が、通常であればスマートEXなどでネット予約できるのに対し、障がい者手帳の割引を受ける場合は窓口に並ばなければいけない、というイメージですね。
ID/パスワードの課題については、おそらく多くの人が経験のあることかと思います。
以前は簡単な英数字で設定できたパスワードが、最近は大文字小文字記号を混在させないとパスワードとして設定できない、という場合も多いです。
つまり、パスワードの桁数を増やす、頻繁に変更するなどの方法でしか、不正利用対策ができていないという状態なのです。こうなると、サイトごとにID/パスワードが違うという現象が起こり、パスワード管理が煩雑になりますよね。
現状、企業の不正利用対策が「個人の心がけ」の範囲を脱することができておらず、パスワード管理に限界がきていると感じます。
——パスワードの管理が煩雑になると、“キャッシュレス離れ”が起こる可能性もありますね。
そうですね。まさに高齢化社会となっている現在の日本では、そうなりやすいのではないでしょうか。
高齢者の中には、クレジットカード・キャッシュレスなどの分野において、利用そのものに対して不安を持たれる方も多くおられます。その上でパスワード管理が煩雑になるということは、それだけ決済フローも複雑になる場合があるので、高齢化が進む日本において、キャッシュレス離れが起こる可能性は十分にありますね。
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