楽天シンフォニーの今後の展望

 首都ナイロビの郊外にケニア政府肝いりでつくられたテクノロジーハブ「コンザテクノポリス」がある。シリコンバレーになぞらえて「シリコンサバンナ」とも呼ばれる。モバイル先端技術への関心が高い同国で、テルコム・ケニアと協業する運びになった楽天。「今後の事業展開については、案内できるタイミングでお知らせします」と語り、含みを持たせた楽天シンフォニー担当者。

 日本とは逆にアフリカ地域では人口が急速に増加している。人が増えれば自ずと携帯市場も拡大していく。アフリカの人口増加率は年間約2.9%で、経済成長率はそれを上回っている。日本でも電波がつながりにくい地域があるが、アフリカ諸国では携帯で通話中に音声が乱れることが日常茶飯事だ。通信キャパシティが限られているなか、スマホユーザー数が増え続け、さらには負荷の大きい動画サービスなどが流行り、スマホの通信量は拡大の一途をたどる。

 先進的なフィンテック事業であるM-Pesaは、ケニアから東アフリカ地域に拡大した。同様に楽天シンフォニーもケニアでの成功を軸にして、アフリカでのプレゼンスを高めることを目指しているのだろう。

 2018年に日本国内の携帯電話(MNO)事業に参入した楽天モバイルは、先行投資がかさみ楽天グループ全体の財務状況にも負担が重くのしかかった。後発で国内シェア獲得のために低価格でサービスを提供しており収益化に苦労した。しかし楽天の勝算は、先端技術である仮想化Open RANネットワーク構築の知見を生かした海外進出にある。それが、無謀とも思えるような巨額資金をモバイル事業に投下した理由だろう。

 楽天シンフォニーは、すでにアメリカ、シンガポール、インド、韓国、ヨーロッパ、中近東アフリカ地域に拠点がある。海外事業は、楽天にとって今後の業績向上をかけた本丸といっていいかもしれない。通信インフラというのは事業規模が大きく、その国のICTセクター全体への影響力がある。

 ITではアメリカの軍門に降った感がある日本。そんななか、楽天は和製IT企業として数少ないグローバルプレーヤーに脱皮しようとしている。

(文=Takuya Nagata/作家、社会開発家、テクノロジー・エキスパート)

提供元・Business Journal

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