なぜアフリカのケニアなのか

 楽天シンフォニー担当者は「テルコム・ケニア社との協議に基づき協業します。大規模な商用Open RANネットワークを構築した楽天モバイルにネットワーク機器を提供した知見を生かし、アフリカ地域に限らずグローバルにOpen RANネットワーク推進に貢献してまいります」と説明する。楽天は、ヨーロッパの先進国ドイツでも事業を行っている。ケニア共和国にこだわっているわけではないが、アフリカ地域で大きな需要を見込んでいることは間違いない。

 簡単に日本の通信業界の成り立ちを振り返ってみよう。長らく固定電話で通話していたのが、ポケットベルが生まれ携帯電話になり、やがてNTTドコモの「iモード」という当時、世界的に見ても画期的なサービスに発展した。iPhoneが登場しスマートフォンの時代になった現在でも、日本は携帯社会だといわれる。

 一方でアフリカは、ある意味では日本以上にスマホが必需品になっている。多くのことをスマホを介して行っており、銀行口座のような役割も果たしている。「日本にも携帯を決済に使えるサービスが存在する」という主張があるだろう。しかし、初代iPhoneが登場した2007年にケニアでは、支払いや資金の受け取りが可能なM-Pesaが生まれ、モバイルマネーが世界的に脚光を浴びるキッカケになった。

 銀行口座は、電気や水道のように万人が享受する社会インフラだ。日本に住んでいるとそのように思いがちだが、開発途上国に行くと様相は異なる。収益が見込めない貧困層が銀行口座を開設するのは困難を極めるのだ。

 有線通信インフラは大規模な初期投資が必要だが、国が支援しても必ずしも事業予算は潤沢というわけではない。また、従来のメタル回線には銅が使われていた。多くの人々が生活に困窮するアフリカでは、金属資源として現金化する目的で銅線の盗難が後を絶たなかった。

 そこに登場した携帯電話は、救世主のような存在だった。そして、アフリカは一足飛びにスマホ社会化していったのである。これが、いわゆるリープフロッグ現象だ。