私たちの先祖がアフリカを出たころ、肌の色は黒かった―――そんな通説はよく知られています。

ところが従来は「ヨーロッパに渡った人類は強い冬の日照不足に対応するため、すぐに肌が白くなった」と考えられてきました。

しかし、イタリアのフェラーラ大学(UNIFE)で行われた大規模な古代DNA研究は、その定説に大きく疑問を投げかけます。

約4万5000年前から1700年前までにヨーロッパ各地で暮らしていた数百人の遺伝子を詳細に分析した結果、実に6割以上が濃い色(dark to black)の肌を示していたのです。

いわゆる「白い肌(light~pale)」とされる個体は1割にも満たず、本格的に増え始めたのは紀元前後に近い時期からかもしれない、という驚きの指摘も含まれています。

この発見は、石器時代の狩猟採集民に代表される初期ヨーロッパ人が、想像以上に長い期間、アフリカ起源の“濃い肌色”を保っていた可能性を示唆します。

狩猟生活によってビタミンDを十分に摂取できたため、肌を白くする必要性がそれほど強く働かなかったのではないか――そんな新たな進化のシナリオが浮かび上がってきました。

肌の色の変化はいつ、そしてなぜ起こったのか。

本研究は、人類の進化と移動の歴史を改めて見直すきっかけとなりそうです。

研究内容の詳細は2025年2月12日にプレプリントサーバーである『bioRxiv』にて公開されました。

目次

  • 人類は最初みんな黒い肌を持っていた
  • 白人は思ったよりも最近になってうまれた
  • 肌の色が物語る人類の歩み

人類は最初みんな黒い肌を持っていた

3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった
3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった / 肌の色の割合を時代別に示したもの。新石器時代になる以前では暗い肌の色がヨーロッパで主流だったことがわかります/Credit:Silvia Perretti et al . bioRxiv (2025)

人類はおよそ20万年前にアフリカで誕生し、そこから世界各地へと移動をはじめました。