その結果、先行研究で報告されていたような、カップルが離れて過ごした時間の長さと精子の質には関連がないことが示されています。
カップルがお互いに会わない時間が長くても、男性の精子の質に有意な変化は起きていませんでした。
ところがアンケート調査で「パートナーには異性の友人が多すぎる」とか「浮気している可能性が高い」と回答していた男性ほど、性交時に射出される精子濃度が増加していたことがわかったのです。
この影響はマスターベーションで得られた精子には見られず、性交時のみに限定されていました。
この結果は「パートナーに性的ライバルが多いと感じている男性ほど、精子競争のリスクを察知し、体が無意識に精子の質を変化させる可能性がある」ことを示すものです。
その一方で、逆説的な発見も見られました。
「パートナーは自分との関係に忠実であり、浮気などしていない」と感じていた男性ほど、精子の運動量が高いことがわかったのです。
精子の運動量が高いと、卵子へと素早くまっすぐに泳ぐことができるため、競争に有利に働きます。
一般的な精子競争の理論から考えると、パートナーの貞操が低いと認識する(浮気の可能性を疑う)男性ほど、精子競争リスクに対応するために、精子の運動量を高めることが予測されましたが、実際には逆のことが見られました。
「自分のパートナーは貞節だ」と信じているのに、精子の運動量が高まっていたのです。
研究者はこれについて「この発見は、ヒトの射精調整が他の霊長類よりもはるかに複雑である可能性を示唆しており、さらなる研究が必要であることを示している」と述べています。
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私たちの体は、気づかないうちにさまざまな環境要因に適応していることが、今回の研究からも分かります。
「恋人が異性の友達と仲良くしている…」そんなとき、男性の心だけでなく、体もまた無意識に反応しているのかもしれません。