さらに、医療や心理学の領域でもオノマトペは重要視されています。

患者が「ズキズキする」、「チクチクする」、「イライラする」といえば、医師や看護師はその痛みの種類や原因、心のストレス状態を推測しやすくなります。一口に「痛い」ではなく、具体的なオノマトペを使うことで、コミュニケーションが正確かつスムーズになるのです。

また、一部の研究者は「あるオノマトペを聞いたとき、脳のどの領域が活性化するか」を調べ、音象徴が脳内回路にどう関わるかを探ろうとしています。

この分野はAIや自然言語処理にも波及しており、音のニュアンスをどう機械に理解させるかが大きな課題となるでしょう。

日本語のオノマトペは、単なる音まねを超えて感覚や感情を一瞬で伝える力をもっています。

つまり、オノマトペは私たちの認知やコミュニケーションをより感覚的・ダイレクトに繋ぐ音の架け橋といえます。

子どもの学習支援、漫画や広告の演出効果、医療や心理の現場での微妙な感情・痛みの共有など、その応用範囲は実に多岐にわたります。

日本語独特の「擬態語・擬情語・擬音語」の世界を、今後さらに解明していくことによって、人間の五感や脳の仕組みがいっそう鮮明になってくるかもしれません。

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ライター

岩崎 浩輝: 大学院では生命科学を専攻。製薬業界で働いていました。 好きなジャンルはライフサイエンス系です。特に、再生医療は夢がありますよね。 趣味は愛犬のトリックのしつけと散歩です。

編集者

ナゾロジー 編集部