英語などでは動作そのものを細かく動詞で表す一方、日本語では副詞的にオノマトペを添えて微妙なニュアンスを表現する文化が育まれたとも言えます。

こうした音象徴は一見「子どもの言葉遊び」のように思われがちですが、その背後には人間の脳と言語の深い結びつきが潜んでいます。

音とイメージ、さらには感情や心理状態までリンクさせる独特の仕組みこそ、日本語のオノマトペが持つ不思議な魅力であり、私たちが無意識に使っている言語の魔力といえるでしょう。

人間の認知を揺さぶるオノマトペの可能性

オノマトペが持つ音がイメージを直感的に伝えるという力は、私たちの日常で幅広く活用されています。

まず注目したいのが、子どもの言語獲得における役割です。

幼い頃に覚える「わんわん」、「にゃーにゃー」、「いないいないばあ」などは、意味を詰めこむ前に音そのもののリズムで楽しむものです。

こうしたオノマトペは対象の実体を単純化して提示する機能があり、幼児にとって視覚と聴覚の一致がとりやすいのです。

学術研究においても、オノマトペを多く含む絵本が、子どもの語彙力や発話意欲を刺激するとの報告があり、教育の現場でも積極的に活用されています。

次に大人の世界でオノマトペが威力を発揮するのが、漫画や広告、文学といった創作・表現の分野でしょう。

漫画では「ガーン」、「ドキドキ」、「ぞわぞわ」という文字を見ただけで、音が鳴ったような感覚になり、同時に登場人物の心理状態や状況を瞬時に察知できます。

いわば視覚と聴覚と感情をまとめて表す万能ツールであり、他の国の言語圏でもMANGAの翻訳版にオノマトペをそのまま残すケースさえあるほどです。

また広告・商品パッケージで「ふわふわ」、「サクサク」といった言葉を使うと、食感や触感が脳裏に浮かび、購入欲が刺激されます。

視覚的に訴える画像に耳で感じる音のイメージが掛け合わさることで、より強烈な印象を与える仕組みと考えられています。

オノマトペが加わると物のもつイメージがより鮮明になる
オノマトペが加わると物のもつイメージがより鮮明になる / Credit:Canva