その一方で、日本は脱炭素という方針と矛盾する約束もしている。

石破首相はトランプ大統領に、米国から液化天然ガスLNG輸入をするという約束をした。トランプ大統領は、日米首脳の共同記者会見で、アラスカのLNGや石油の輸出にも言及していた。

だが、いまから本気で日本が2035年に60%の削減をするなら、化石燃料の消費量は大幅に削減するしかなく、米国からであれどこであれ、新たな輸入先を増やす余地は全く無いはずだ。

まして、アラスカを開発するとなると、それだけで時間がかかる。開発が終わったころには日本はますます化石燃料を使わないはずである。

石破首相は米国に1兆ドルの投資をするとも言った。この一方で、トランプ政権は、化石燃料を掘りまくり(Drill Baby Drillが合言葉である)、それによって米国製造業を発展させるとはっきり言っている。

日本が投資をすると、その企業は米国の安価で豊富な化石燃料供給の恩恵を受けるわけで、もちろんCO2を大量に排出する。日本でCO2排出をゼロにすると言っている一方で、米国ではCO2排出を増やす約束をしている訳で、これまた不条理である。

つまり、日本はパリ協定では「CO2をゼロにします」と約束する一方で、米国には「化石燃料を輸入します」「米国に投資します(=CO2を排出します)」と言っている。

まるきり二枚舌である。こんなことでは、いずれ破綻がくる。

トランプ政権誕生から、まだ1か月も経っていない。だがすでに、世界の流れは大きく変わっている。ウクライナの戦争におけるロシアの勝利が明らかになってきた。ドイツの総選挙は2月23日に迫っており、緑の党は敗北が必至だ。

インドのモディ首相はトランプ大統領との首脳会談で石油・天然ガスの輸入を表明した。これに続いて、東南アジア諸国も米国の化石燃料輸入を表明するだろう。

米国は国際援助の在り方も根本から変えようとしている。G7も、それが主なスポンサーである国際開発機関も、化石燃料事業への投融資を禁止してきたが、これも様変わりするだろう。