今回の結果は、現段階では技術的課題が多く残されていることを意味します。
しかし、これらの課題が解決されれば、次のステップとしてヒトへの応用が視野に入ります。
患者自身の細胞を利用し、動物の体内で必要な臓器を作製することができれば、免疫拒絶反応を回避できる可能性があります。
つまり、胚盤胞補完法により、免疫拒絶反応やドナー不足といった従来の臓器移植が直面してきた課題を解決し、新たな移植医療の道を切り開くことが期待されます。
一方で、胚盤胞補完法がもたらす倫理的な壁もあります。
動物の体内でヒトの臓器を作製することに対する社会的な懸念や、実験動物の福祉を守るための適切なガイドラインの整備が挙げられます。
また、ヒトの細胞が混在する動物をどのように扱うべきか、倫理的な境界が曖昧になる問題も議論の対象です。
科学技術の進展と社会的価値観のバランスをどのように取るべきか、私たちの課題はまだ始まったばかりです。
胚盤胞補完法や異種移植など臓器移植に関する研究がさらに進展すれば、臓器不足問題の解消や新たな医療技術の創出が期待されます。
この研究分野が未来の医療にどのような形で貢献するのか、今後の進展に大いに期待が寄せられます。
全ての画像を見る
参考文献
マウス体内でラットの心臓を持つキメラ動物の作製に成功(PDF)
https://www.naist.jp/pressrelease/241204.pdf
元論文
Blastocyst complementation-based rat-derived heart generation reveals cardiac anomaly barriers to interspecies chimera development
https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.111414
ライター
岩崎 浩輝: 大学院では生命科学を専攻。製薬業界で働いていました。 好きなジャンルはライフサイエンス系です。特に、再生医療は夢がありますよね。 趣味は愛犬のトリックのしつけと散歩です。