三つ目は、「本当の答えを知っているけど、あえて間違った答えを選ぶ」というタイプ。これは行動の歪み(Distortion of Action)と呼ばれる現象です。
たとえば、職場の会議で上司が「この企画、完璧だよね?」と言ったとき、本当は「明確な問題点」に気づいていても、周りの同僚が全員うなずいているので、「ここで異論を唱えたら立場が悪くなるかも」と考え、あえて「そうですね」と同調する。規範的影響と似ていますが、こちらは本人が「本当の答え」を知っているにもかかわらず、場の空気を乱さないために誤った選択をする点が異なります。
こうしたパターンはいずれも多くの人には心当たりのあるシチュエーションではないでしょうか。
SNSでは特定の考えに多くの人が同調して、トレンドになったり炎上したりというパターンが良く見られますが、この原因にもここで示された同調のパターンが関連していると考えられます。
SNSユーザーの動向を調査した研究は、最近増えてきていますが、そこでも話題になった意見への同調の傾向が高まることが報告されています。
SNSは便利なツールですが、無意識のうちに私たちの思考を形作る「同調の場」にもなっています。
では、私たちはどうすればSNSを含め同調圧力に負けず、自分の意見を保てるのでしょうか?
“自分の意見”を守るために
アッシュの実験では、流されなかった被験者と、流されやすかった被験者には顕著な違いがあったと報告されています。
流されなかった人々は、自分の意見に確信を持ち、論理的思考を重視する傾向がありました。一方で、流されやすい人々は、不安を感じやすく、判断に自信が持てない傾向があったのです。
こうした特性はおそらく、本人が一番自覚している問題でしょう。
SNSでは、特に情報が短時間で大量に流れるため、判断に迷いやすい人ほど影響を受けやすくなります。もし、自分が意見を持つことに不安を感じやすいと自覚しているなら、より慎重に情報を吟味し、冷静に考える習慣を持つことが重要です。