その結果、多くの参加者は自分の目で見た正しい答えではなく、周囲の間違った意見に流されることが確認されました。
実験では被験者の75%が、多数派の誤った答えに最低1回は同調したと報告されています。
多くの人は最初は自分の直感に従っていたものの、試行を繰り返すうちに徐々に「自分が間違っているのではないか」と不安を抱き始め、最終的に集団の意見に従うようになったのです。
しかし、興味深いことに25%の被験者は一度も周囲の意見に流されませんでした。
この「一度も流されなかった被験者」は、12回の試行すべてにおいて、自分の直感を信じ、たとえ周囲と違う選択をしても、自信をもって自分の判断を貫いたのです。
これはその人の性格によって、同調圧力の感じ方が大きく異なることを示しています。
では、どうして多くの人は自分の考えや信念を周囲の反応で簡単に変えてしまうのでしょうか?
あなたはどっち?流される人と流されない人の違い
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アッシュの実験とその後の研究によると、人が同調する理由には大きく三つのパターンがあるとされています。
一つ目は、「周りと違うのが怖い」と感じるタイプ。これは規範的影響(Normative Influence)と呼ばれます。
たとえば、みんなが「この映画は最高!」と言っていると、本当は微妙だと思っていても「自分だけ違う意見を言ったら浮くかも…」と不安になり、つい「うん、面白かったよね」と合わせてしまう。こうした“空気を読む”心理が、規範的影響の典型例です。
二つ目は、「もしかして自分が間違ってる?」と不安になるタイプ。これは情報的影響(Informational Influence)と呼ばれます。
たとえば、新しいスマホを買おうとして口コミをチェックしたら、最初は「A社のモデルがいい」と思っていたのに、多くのレビューが「B社のほうが圧倒的に優れている」と評価しているのを見て、「あれ、もしかしてB社のほうが正解なのか?」と考えが揺らぐ。こんなふうに、他人の意見を頼りにしすぎることで、知らないうちに流されてしまうのです。