「あなたの意見は本当にあなたのものですか?」
この問いかけに、確信をもって「イエス」と答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
SNSでは日々、膨大な情報が流れ、私たちは無意識のうちにそれらに影響を受けています。
「いいね!」の数が多い投稿は、より信頼できる情報に見え、フォロワーが多い人の意見は正しいと錯覚しやすくなります。そして、周囲と違う意見を言うことには不安を感じます。
こうした環境の中で、私たちの判断は本当に自分自身のものなのか。それとも、気づかぬうちに集団の圧力に流されているのか。
この疑問を解き明かす鍵となるのが、1950年代にソロモン・アッシュ(Solomon Asch)が行った「同調実験」です。
目次
- アッシュの同調実験—人はなぜ流されるのか?
- あなたはどっち?流される人と流されない人の違い
アッシュの同調実験—人はなぜ流されるのか?
ソロモン・アッシュは、社会心理学の分野で数々の影響力ある研究を行った心理学者です。彼は個人の判断がどのように社会環境によって左右されるのかに強い関心を持っていました。
当時、第二次世界大戦が終わり、ナチス政権下での人々の行動に対する反省が広まっていました。
「なぜ多くの人々が、明らかに間違っていると感じながらも権威や集団に従ってしまったのか?」という疑問は、多くの研究者の間で議論されていました。アッシュは、この疑問を科学的に解明するため、実験を設計したのです。
アッシュの同調実験では、参加者を8人1組のグループにし、そのうち1人だけが本当の被験者で、残りの7人はサクラでした。参加者には、異なる長さの3本の線と基準線を見せ、どの線が基準線と同じ長さであるかを答えさせました。
実験は12回の試行され、そのうち7回はサクラが全員間違った答えを言うという仕掛けがされていました。そして被験者が明らかに間違った答えを聞かされた状況で、どのような反応を示すのかを観察したのです。
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