古典系ならば、高速の粒子と低速の粒子を見分けてドアをタイミングよく開くための情報を得る段階となります。
また、量子系ならば、粒子の情報を得る段階となります。
次のエネルギー取り出しのステップでは、得られた情報をもとに操作を行いエネルギーを取り出します。
古典系ならば片側に高速粒子を偏らせることでピストンなどを動かします。
あるいは量子系なら、エネルギーの高い状態を巧みに利用して外部へエネルギーを吐き出させることになります。
量子論では「粒子がどちらにいるか」ではなく、もっと別の量子状態(エネルギーやスピンなど)を測定して、それに応じて操作(フィードバック)を行うことができるからです。
簡単に言えば、古典系ではできないことをやって、ピストンを動かすためのエネルギーを古典系よりも効率よく抽出するわけです。
最後のステップは、悪魔がこの作業を行うために使用したメモリの消去です。
悪魔の正体が機械でも生物でも、記憶容量は有限です。
そのため、悪魔エンジンを永久に回すには、最初の測定で得られる情報を記録するための無限の記憶容量を用意するか、作業が終わったサイクルの記憶を消去して再び新たな記憶をできるようにしなければなりません。
当然、無限の記憶容量などは存在しないため、必然的に残りの不要な情報を削除する作業が必要になります。
悪魔エンジンの肝は、この三つのステップを繰り返し行う点にあります。
しかし、実際に科学が発展するにつれて、「この悪魔が測定を行い、記憶し、その情報を使うには何らかのコストがかかる」ことがわかってきました。
サイクルの各段階をエネルギーのプラス・マイナスで分類すると、
①測定段階はエネルギーマイナス(測定するためにエネルギーがかかるから)
②エネルギー取り出し段階はエネルギープラス
③メモリ消去の段階はエネルギーマイナス(メモリ消去にもエネルギーがかかるから)となります。