そして偽ピット氏はついに、腎臓がんの治療費が必要だと訴え、AIで生成した病院のベッドにいる自身の写真を何枚も送信しました。
アンヌさんはその写真をインターネットで検索しましたが、見つからなかったため、「私のためだけに撮影したもの」と信じ込んでしまいました。
その結果、アンヌさんは夫(裕福な起業家)との離婚などで得たお金をすべて詐欺師に送金してしまいました。
1年半の被害総額は、83万ユーロ(約1億3000万円)でした。
では、なぜこんな詐欺がまかり通ってしまうのでしょうか。
なぜ人はロマンス詐欺に遭ってしまうのか?
詐欺の被害を受けたアンヌさんは、金銭的な損失だけでなく、精神的なダメージも受けています。
彼女はこの出来事で破産し、3度にわたって自ら命を絶とうとしました。
「なぜ私が選ばれ、このように傷つけられたのか」と、アンヌさんは涙ながらに語っています。
「この人たちは地獄に落ちるべきだ。詐欺師たちを見つけなくてはならない。お願いです、見つけるのを助けてください」と強く訴えました。
多くの人は、アンヌさんの経験を耳にして、「自分は騙されない」と感じます。
でもそれは、ロマンス詐欺の被害者たちも同じです。
実際には、誰もが詐欺に遭う可能性があります。
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詐欺師は、被害者の心理的な弱点を巧みに突きます。
まず、孤独感や愛情への渇望が詐欺を成功させる要因の一つです。
特に大きなライフイベント(離婚や退職など)を経験した人は、精神的に不安定になりやすく、愛情を求める気持ちが強まります。
また、確証バイアスも影響します。
これは、自分が信じたいことを優先的に受け入れる心理的傾向です。
アンヌさんの場合、「本物のブラッド・ピットが私を愛している」という思い込みが強く、疑念が生じてもその証拠を無視してしまいました。