その結果、ADHDスコアの高い被験者はそうでない被験者に比べて、最終的なベリーの収穫量が多くなっていました。
これは非常に興味深い結果です。
ADHD症状を持つ人はおそらく、同じ茂みから採れるベリーの数が減ってきたことで集中力を切らし、注意散漫さから他の茂みが気になり始め、そして「思い立ったらすぐに行動する」という衝動性から採集ポイントを変えていたと考えられます。
しかしそれによって、最終的なベリーの収穫量が増えるという有益な結果につながっていたのです。

このことはADHDの特性が初期人類の狩猟採取グループにおいて生存に有利に働いた可能性を示唆しています。
研究には参加していない英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマイケル・J・ライス(Michael J Reiss)氏は「ADHDは深刻な悪影響と関連づけて考えられるが、積極的な行動や迅速な意思決定が高く求められるようなシチュエーションでは役立つのかもしれない」と指摘しました。
ADHDの人は社会の中で、組織の規律や要望に応じて仕事をすることは苦手ですが、個人の裁量や責任で行う仕事では高いパフォーマンスを上げる場合があります。実際社会体に成功した有名人の中には、ADHDの特性に当てはまる人も多く存在すると言われます。
もしこうした行動特性が私たちの祖先において、未知なる狩猟採集ポイントの発見に繋がり、仲間の食料難を救うことにも繋がっていたとしたら、ADHDは人類の繁栄を促す大きな助けとだったのかもしれません。
学校や会社などの集団生活の中では問題児扱いされてしまうことが多いADHDですが、実際その特性にはネガティブな側面ばかりではなく、適切な状況さえ得られれば大活躍できる可能性が秘められているのです。
どれくらい時間が過ぎたかわからない…「ADHDの時間盲」とは?